7.3 埋め込まれた空間の双対


\begin{jtheorem}\upshape
$X$, $Y$\ は Banach 空間で、$\iota\colon X\to Y$\...
...isplaymath}は $1$\ 対 $1$\ の連続線形作用素である。
\end{jtheorem}

証明

まず $ \widetilde T=T\circ\iota\colon X\to\R$ は連続線形作用素の合成 写像であるから、連続線形作用素である。ゆえに $ \widetilde T\in X'$ .

$ \varphi$ の線形性は明らかである。例えば

$\displaystyle \varphi(T+S)(x)=(T+S)(\iota(x))
=T(\iota(x))+S(\iota(x))
=\varphi(T)(x)+\varphi(S)(x)
=(\varphi(T)+\varphi(S))(x)
$

$ \forall x\in X$ に対して成り立つことから $ \varphi(T+S)
=\varphi(T)+\varphi(S)$ . $ \lambda\in R$ に対して $ \varphi(\lambda T)
=\lambda \varphi(T)$ となることも同様に示せる。

$ \varphi\colon Y'\to X'$ が 連続であること。 $ \forall T\in Y'$ に対して

$\displaystyle \vert\varphi(T)(x)\vert=\vert T(\iota(x))\vert\le \Vert T\Vert _{...
...\Vert _Y
\le \Vert T\Vert _{Y'}\Vert\iota\Vert _{{\cal L}(X,Y)}\Vert x\Vert _X$   $\displaystyle \mbox{($x\in X$)}$

より

$\displaystyle \Vert\varphi(T)\Vert _{X'}\le
\Vert\iota\Vert _{{\cal L}(X,Y)} \Vert T\Vert _{Y'}.
$

これは $ \varphi\colon Y'\to X'$ が連続であることを示す。

$ \varphi\colon Y'\to X'$ $ 1$ $ 1$ であること。$ T_1$ , $ T_2\in Y'$ に対して

$\displaystyle \varphi(T_1)=\varphi(T_2)
$

としよう。これは

$\displaystyle \varphi(T_1)(x)= \varphi(T_2)(x)$   $\displaystyle \mbox{($x\in X$)}$

ということだが、$ \varphi$ の定義より

$\displaystyle T_1(\iota(x))=T_2(\iota(x))$   $\displaystyle \mbox{($x\in X$)}$$\displaystyle .
$

$ \iota(X)$ $ Y$ において稠密で、$ T_1$ , $ T_2$ がともに $ Y$ 上の連続 写像であることから、

$\displaystyle T_1=T_2.
$

ゆえに $ \varphi$ $ 1$ $ 1$ である。$ \qedsymbol$


\begin{jtheorem}\upshape
上の定理の状況で、$X$\ が反射的 (回帰的) であれば像は稠密である。
\end{jtheorem}

証明

$ h\in X''$ $ \varphi(Y')$ 上で 0 になっているとする:

$\displaystyle {}_{X''}\langle h,\varphi(T)\rangle_{X'}=0$   $\displaystyle \mbox{($T\in Y'$)}$$\displaystyle .
$

$ X''$ が回帰的であることから、 $ \tilde h\in X$ が存在して

$\displaystyle {}_{X''}\langle h, S\rangle_{X'}={}_{X'}\langle S, \tilde h\rangle_{X}$   $\displaystyle \mbox{($S\in X'$)}$$\displaystyle .
$

ゆえに

$\displaystyle {}_{X'}\langle \varphi(T), \tilde h\rangle_{X}=0$   $\displaystyle \mbox{($T\in Y'$)}$$\displaystyle .
$

これは

$\displaystyle {}_{Y'}\langle T, \iota\tilde h\rangle_{Y}=0$   $\displaystyle \mbox{($T\in Y'$)}$

ということ。これから $ \iota\tilde h=0$ , ゆえに $ \tilde h=0$ . ゆえに

$\displaystyle h=0.
$

これは $ \varphi(Y')$ が稠密であることを示している。 $ \qedsymbol$

上の定理の記号は大げさ過ぎるので、覚え易い形に翻訳すると、
$ X\subset Y$ が連続で稠密な Banach 空間の埋め込みで、$ X$ が反射的 ならば、 $ Y'\subset X'$ は連続で稠密な埋め込みとなる。

そして、この応用として

$\displaystyle L^2=(L^2)'\subset (H^1_0)'=H^{-1}
$

は連続で稠密な埋め込みとなることが分かる。

桂田 祐史
2017-04-30