7.4 Lebesgue 空間の双対空間

$ \R^n$ 内の可測集合 $ \Omega$ , $ p\in[1,\infty]$ に 対して Lebesgue 空間 $ L^p(\Omega)$ を考える。 以下 $ \Omega$ は固定するので、 $ L^p(\Omega)$ のことを単に $ L^p$ と書く。

よくある習慣にのっとり、 $ p\in[1,\infty]$ に対して、 $ p'$ を共役指数とする。 すなわち $ 1<p<\infty$ ならば $ p'$ $ 1/p+1/p'=1$ となる数、 $ p=1$ ならば $ p'=\infty$ , $ p=\infty$ ならば $ p'=1$ .

任意の $ p\in[1,\infty]$ , $ g\in L^{p'}$ に対して、

$\displaystyle J_g\colon L^p\ni f\mapsto \int_\Omega f(x)\overline{g(x)}\Dx\in \C
$

とおくと、 $ J_g\in (L^{p})'$ である。これは Hölder の不等式

$\displaystyle \Vert f g\Vert _{L^1}\le \Vert f\Vert _{L^p} \Vert g\Vert _{L^{p'}}$   $\displaystyle \mbox{($f\in L^p$, $g\in L^{p'}$)}$

から分かる。

こうして

$\displaystyle J\colon L^{p'}\ni g\mapsto J_g\in (L^p)'
$

という写像が定義されるが、これは等距離写像である。すなわち

$\displaystyle \Vert J(g)\Vert _{(L^p)'}=\Vert J_g\Vert _{(L^p)'}=\Vert g\Vert _{L^{p'}}$   $\displaystyle \mbox{($g\in L^{p'}$)}$$\displaystyle .
$

実は $ p\in [1,\infty)$ の場合、この写像 $ J\colon L^{p'}\to (L^p)'$ は 全射 (従って Banach 空間の同型写像) であることが、 次の Riesz の表現定理から保証される。

\begin{jtheorem}[(Lebesgue 空間に関する) Riesz の表現定理]\upshape
$...
...ne{g(x)}\,\Dx
\quad\mbox{($f\in L^p(\Omega)$)}.
\end{displaymath}\end{jtheorem}

この事実を $ J$ を省略して単に $ (L^p)'=L^{p'}$ ( $ 1\le p<\infty$ ) と書 くことが多い。

$ p=\infty$ のときは $ J$ は全射にはならない。すなわち

$\displaystyle J(L^1)\subsetneqq (L^\infty)',$   $\displaystyle \mbox{$J$\ を省略して書くと}$$\displaystyle \quad
L^1\subsetneqq (L^\infty)'.
$

$ L^1$ は Banach 空間であり、$ J$ は等長であるから、 $ J(L^1)$ $ (L^\infty)'$ の閉部分空間である (特に $ J(L^1)$ $ (L^\infty)'$ で稠密ではない)。 だから $ (L^\infty)'$ $ L^1$ よりもかなり大きい (感覚的な話)。

桂田 祐史
2017-04-30