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3.4.3 数値解析(Nの値を変えて)

エネルギー$ E_{j}$は、$ N$の値とどんな関係があるか, Nの値を変えてみたときのエネルギー$ E_{j}$の変化をまとめた表である。 境界条件、初期条件、傾き、公比は上の表で用いたものを採用する。

(a) $ \lambda=1.0$としてNの値を変えてみた表である。

\begin{displaymath}
\begin{array}{\vert c\vert c\vert}
\hline
N & エネルギー \\ ...
...& 12.339473 \\
\hline
100000 & 12.338239\\
\hline
\end{array}\end{displaymath}



$ N$の値が大きいほど、エネルギーは本来の値に近づく様に近似しているので、 エネルギー$ E_{j}$は、$ N$の値が小さいと本来の値より大きくなってしまう。

(b) $ 0<\lambda<1$のサンプルとして、 $ \lambda =0.5$を採用し $ N$の値を変えた表である。

\begin{displaymath}
\begin{array}{\vert c\vert c\vert c\vert c\vert c\vert}
\hli...
...018531 &\ \ 0.999979\ \ &\ \ 0に収束\ \ \\
\hline
\end{array}\end{displaymath}


$ N$が大きくなるほど、公比は$ 1$に近づく。その結果、 $ N=\infty$とすればエネルギーの保存則が成り立つだろう(結果からの予想)。 しかし、数値解析を行なう時は$ N=\infty$と取ることは不可能。 また、 $ h=\dsp\frac{1}{N}$なので、$ N=\infty$と取ると、 $ h=0$となり、分母=0となる式があるので実用的ではない。

もっと詳しく$ N$と公比の関係を調べる。

\begin{displaymath}
\begin{array}{\vert c\vert c\vert c\vert}
\hline
N & 公比a &...
...
\ \ 1000\ \ &\ \ 0.958869\ \ & 0.041131 \\
\hline
\end{array}\end{displaymath}

公比$ a$は、ある時刻$ t$のエネルギー$ E_{t}$と、 ある時刻$ t$ から時間を$ \tau$ずつ増やし、$ t+\tau$, $ t+2\tau$, $ \dots$, $ t+1$になった時のエネルギー$ E_{t+1}$の比 $ \dsp\frac{E_{t+1}}{E_{t}}$の値である。
公比aは、次の計算で求めた。

  $\displaystyle \mbox{公比$a$}$$\displaystyle =\left( \dsp\frac{E_{j+1}}{E_{j}}\right)^{\dsp\frac{1.0}{\tau}}$    


この表をもとに、次のグラフを書いた。 縦軸に $ y=\log_{10}{(1.0-\mbox{公比a})}$、横軸に$ x=N$ を 取ったものである。 (表以外の$ N=100$$ N=300$までの適当な値も取ってグラフを書いた。)

図 3.8: $ N$が十分大きいと直線
\includegraphics[width=6cm]{figure/zu99.ps}

$ x=N=100$に近いところは誤差と考えると、 $ N$が十分大きいとき、このグラフは、ほぼ直線となる。 傾きは、 $ \dsp\frac{(-1.385835)-(-1.279268)}{1000 - 500}=-0.000213$
より、$ N$ と公比aの関係は、$ C$を任意定数として


  $\displaystyle \log_{10}(1.0-$公比a$\displaystyle )$ $\displaystyle =$ $\displaystyle -0.000213 N + C$
  $\displaystyle (1.0-$公比a$\displaystyle )$ $\displaystyle =$ $\displaystyle 10^{-0.000213 N + C}$
  公比a $\displaystyle =$ $\displaystyle C'・10^{-0.000213 N} +1.0\qquad ( C'=-10^{C},$   $\displaystyle \mbox{$N$が大きいところ}$$\displaystyle )$

$ N=1000$ の時、公比a=$ 0.958869$より


  $\displaystyle 0.958869$ $\displaystyle =$ $\displaystyle C'・10^{-0.213} +1.0$
  $\displaystyle C'・10^{-0.213}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle -0.041131$
  $\displaystyle C'$ $\displaystyle =$ $\displaystyle -0.041131 ・ 10^{ 0.213}$
  $\displaystyle C'$ $\displaystyle =$ $\displaystyle -0.06716906$

ゆえに、


  公比a $\displaystyle =$ $\displaystyle -0.06716906・10^{-0.000213 N} +1.0$

実際、値を代入してみると、だいたい表のとおりになる。

(c)$ \lambda>1$のサンプルとして、 $ \lambda =1.01$を採用し $ N$の値を変えた表である。

\begin{displaymath}
\begin{array}{\vert c\vert c\vert c\vert c\vert c\vert}
\hli...
...549850 &\ \ 1.020083\ \ & \infty に発散 \\
\hline
\end{array}\end{displaymath}



$ N$が小さいほど、公比は$ 1$に近づく。その結果、 $ N=0$とすればエネルギーの保存則が成り立つだろう(結果からの予想)。 $ N=0$では、分割をしないので差分方程式すら作れず全く意味がない。

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Masashi Katsurada
平成14年11月29日