この項の内容は主に Brezis [10] による。 なお、[10] では代数的直和を単に「直和」と書いているが、 この文書では誤解のないようにつねに「代数的直和」と書く。
Hilbert 空間 では、 任意の閉線型部分空間 について
が成立する。
この一般化、つまり内積を考えない直和分解を考えよう。 が二つの線型部分空間 と の代数的直和であるとは、
ということであった ( かつ とも書ける)。
有限次元線型空間のことを思い出しても、 の相手「補空間」 は一意的には決まらない、 ということをまず注意しておく。
無限次元空間の場合は、位相的なことを考慮する必要がある。 一言で言うと、 と を閉集合であるという条件を付加する。 こうしておくとそれぞれへの射影作用素が連続になる (以下の系 3.1.11 を参照)。
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この定義の状況下で、 から や への射影は連続になる (以下で証明する)。
明らかに、 Hilbert 空間においては、 任意の閉線型部分空間 に対して、 の直交補空間 は の位相的補空間になっている。
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証明
にノルム を 与えたノルム空間と、 の部分ノルム空間 を考え、 を
で定めると、これは有界線型かつ全射であるから、 開写像定理により、 , ( : ) ( ) ( ) s.t.
これから任意の に対して、 , s.t.
この補題から次の系は明らかである。
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ところで、ここが重要なことだが、 任意に選んだ閉線型部分空間 に対して、 その位相的補空間が存在するとは限らない。
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(証明はとりあえず省略。 (1), (2) については例えば Brezis [10] などを見よ。 小松・伊藤 [3] や Treves [11] にもあったかな。 (3) については、Banach に載っているとも。)
のときの や においても、 位相的射影を持たない閉線型部分空間がある。 これらが Hilbert 空間と同型でないことを示せば良いわけだが、
F.J.Murray, Trans.Amer.Math.Soc. 41 (1937), 138-152にあるとか (岡本・中村 [3] に載っていた情報)。
桂田 祐史