next up previous contents
Next: B..3 3重対角行列の固有多項式と Strum 列 Up: B. Strum の方法 Previous: B..1.0.2 (2) の証明

B..2 ユークリッドの互除法による Strum 列の生成

多項式 $ f(x)\in\R[x]$ が与えられたとき、 $ f_0(x)=f(x)$ $ f_1(x)=f'(x)$ から Euclid の互除法を行い、関数列 $ f_0(x)$ , $ f_1(x)$ , $ \cdots$ , $ f_\ell(x)$ を作る:

(16) $\displaystyle f_0(x):=f(x), \quad f_1(x):= f'(x),$

    $\displaystyle f(x)$ $\displaystyle =q_1(x)f_1(x)-f_2(x), \quad \deg f_{2}(x)<\deg f_{1}(x),$
    $\displaystyle f_1(x)$ $\displaystyle =q_2(x)f_2(x)-f_3(x), \quad \deg f_{3}(x)<\deg f_{2}(x),$
    $\displaystyle f_2(x)$ $\displaystyle =q_3(x)f_3(x)-f_4(x), \quad \deg f_{4}(x)<\deg f_{3}(x),$
      $\displaystyle \vdots$
(17) $\displaystyle f_{k-1}(x)$ $\displaystyle =q_{k-1}(x)f_{k}(x)-f_{k+1}(x), \quad \deg f_{k+1}(x)<\deg f_{k}(x),$
      $\displaystyle \vdots$
    $\displaystyle f_{\ell-2}(x)$ $\displaystyle =q_{\ell-1}(x)f_{\ell-1}(x)-f_\ell(x), \quad \deg f_{\ell}(x)<\deg f_{\ell-1}(x),$
    $\displaystyle f_{\ell-1}(x)$ $\displaystyle =q_{\ell}(x)f_\ell(x).$

(普通の互除法と異なり、 $ f_{k-1}(x)$ $ f_{k}(x)$ で割ったときの 普通の剰余の $ (-1)$ 倍を $ f_{k+1}(x)$ とすることに注意しよう。 そうする理由は以下の (18) を成立させるためである。)

よく知られているように $ f_\ell(x)$ $ f(x)$ $ f'(x)$ の最大公約多項 式であるから、 $ f(x)\in\R[x]$ が重根を持たない場合、 $ f_\ell(x)\equiv$   定数 ($ \ne 0$ ) となることに注意しよう。 以下この場合に $ f(x)=0$ の解 (根) を求めることを考える。 $ f(x)$ が重根を持つ場合は $ f(x)$ の代わりに $ g(x)=f(x)/f_\ell(x)$ を考えることで同様の議論ができる。


\begin{jtheorem}
% latex2html id marker 948 \upshape
$f(x)\in\R[x]$\ が重根...
...2(x),\cdots, f_\ell(x)
\end{displaymath}は Strum 列をなす。
\end{jtheorem}

証明. まず $ f_\ell(x)\equiv$定数 であるから、Strum 列の条件 (3) は満 たされている。次にある $ x_0\in [a,b]$ , ある $ k\in\{0,1,\cdots,\ell-1\}$ に対して

$\displaystyle f_{k}(x_0)=f_{k+1}(x_0)=0
$

となったとすると、式 (20) から $ f_{k+2}(x_0)$ 以降の $ f_j(x_0)$ もすべて 0 になり、特に $ f_\ell(x_0)=0$ . これは $ f_\ell(x)$ が定数関数 ($ \ne 0$ ) であることに矛盾する。ゆえに Strum 列の条件 (1) が 満たされる。 次にある点 $ x_0$ , ある $ k\in\{1,2,\cdots,\ell-1\}$ に 対して $ f_k(x_0)=0$ となったとすると、式 (20) から

(18) $\displaystyle f_{k-1}(x_0)=-f_{k+1}(x_0).$

ゆえに Strum 列の条件 (2) も満たされる (条件 (3) から上式の値は 0 にな らないことに注意)。 最後に $ x_0$ $ f(x)$ の根であるとき、$ f(x)$ が重根を持たないという 仮定から $ f'(x_0)\ne 0$ で、

$\displaystyle f'(x_0)f_1(x_0)=f'(x_0)^2>0
$

となり、条件 (4) も満たされる。 $ \qedsymbol$ $ \qedsymbol$


next up previous contents
Next: B..3 3重対角行列の固有多項式と Strum 列 Up: B. Strum の方法 Previous: B..1.0.2 (2) の証明
桂田 祐史
2015-12-22