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4.2 Sylvester の慣性律による説明

二分法を Sylvester の慣性律を用いて説明するのは、 森・杉原・室田 [5] による。


線形代数でおなじみの Sylvester の慣性律「行列の符号数は座標 変換で変化しない」を復習しよう。正則行列 $ M$ に対して

    $\displaystyle \pi(M)$ $\displaystyle :=$$\displaystyle \mbox{$M$\ の固有値のうち正のものの個数}$$\displaystyle ,$
    $\displaystyle \zeta(M)$ $\displaystyle :=$$\displaystyle \mbox{$M$\ の固有値のうち $0$\ のものの個数}$$\displaystyle ,$
    $\displaystyle \nu(M)$ $\displaystyle :=$$\displaystyle \mbox{$M$\ の固有値のうち負のものの個数}$

とおく。

\begin{jtheorem}[Sylvester の慣性律による説明]\upshape
$A$\ を 実対...
... \quad
\zeta(A)=\zeta(B), \quad
\nu(A)=\nu(B).
\end{displaymath}\end{jtheorem}

任意に選んだ $ \sigma\in\R$ に対して、 $ A-\sigma I$ を LDU 分解する、 すなわち

$\displaystyle A-\sigma I= L D L^T,$   $\displaystyle \mbox{$L$\ は下三角行列}$$\displaystyle ,$   $\displaystyle \mbox{$D$\ は対角行列}$$\displaystyle .
$

このとき定理から

$\displaystyle \pi(A-\sigma I)=\pi(D), \quad
\zeta(A-\sigma I)=\zeta(D), \quad
\nu(A-\sigma I)=\nu(D)
$

であるが、$ \pi(D)$ , $ \zeta(D)$ , $ \nu(D)$ はすぐに分かる。従って、 行列 $ A$ の固有値について、任意に与えられた実数 $ \sigma$ よりも大きい もの、小さいものの個数が勘定できることになる。

$ A$ が三重対角行列であれば、 LDU 分解は $ O(n)$ の計算量で済ませられることを注意しておく。


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桂田 祐史
2015-12-22