無限次元の線型空間を相手にするときは、 前項の概念 (代数的直和、代数的補空間、代数的射影作用素) はあまり役に立たない。
位相空間論において、 直積位相は射影が連続になるように定義されることからも示唆されるように、 射影作用素は連続であって欲しい (そうなっていると便利である)。 ところで、有限次元線型空間においては、 任意の代数的射影作用素は (当然) 連続になるが、 無限次元線型空間の場合は無条件ではそうならず、 条件として要請する必要がある。
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証明
内の点列 が 内で ( ) と収束したとする。 は連続と仮定したから . ところで であるから、 ということ でもある。極限の一意性から . ゆえに . ゆえに は閉集合である。 も連続なので、同様にして は閉集合であることが示される。
(位相的) 直和や (位相的) 射影作用素の議論で、 線型部分空間を閉線型部分空間に断りなく限るテキストが多いのは、 こういう事情があるのであろう。
次の項で、Banach 空間においては、 代数的直和分解 において、 , が閉集合であれば、 代数的射影作用素は連続であることが示される。 要するに
Banach 空間
の
代数的直和分解
と、
の
への代数的射影作用素
に対して、
が連続
と
は閉集合.
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桂田 祐史