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A..1 ノルム

以下紹介する命題の証明は、桂田 [6] で読める。

$\R^n$ は自然に $\R$ 上のベクトル空間であるが、 任意の $p\in [1,\infty)$ に対して

\begin{displaymath}
\Vert x\Vert _p:=\left(\sum_{j=1}^n\vert x_j\vert^p\right)^{1/p}
\quad\mbox{($x=(x_1,\cdots,x_n)^T\in\R^n$)},
\end{displaymath}

また $p=\infty$ に対して

\begin{displaymath}
\Vert x\Vert _p=\Vert x\Vert _\infty:=\max_{1\le j\le n} \vert x_j\vert
\quad\mbox{($x=(x_1,\cdots,x_n)^T\in\R^n$)}
\end{displaymath}

とおくと (本当は $n$ にも依存するわけだが、 混乱は起らないと考えられるので、単に $\Vert\cdot\Vert _p$ と書くことにする)、 任意の $1\le p\le\infty$ に対して $\Vert\cdot\Vert _p$$\R^n$ のノルムとなる。 以下 $\Vert\cdot\Vert _p$$\R^n$$p$ ノルムと呼ぶことにする。

実数を成分とする $m$$n$ 列の 行列全体の集合 を $\R^{m\times n}$ と書く。 $m=n$ ならば $\R^{m\times n}$ は多元環、 $m\ne n$ であっても $\R^{m\times n}$ はベクトル空間の構造を持つ。

$A\in\R^{m\times n}$ は線型写像 $\R^n\ni x\mapsto A x\in \R^m$ を引き 起こすが、$\R^n$ の任意のノルム $\Vert\cdot\Vert$, $\R^m$ の任意のノルム $\Vert\cdot\Vert'$ に対して、

\begin{displaymath}
\Vert A\Vert'':=\sum_{x\ne 0}\frac{\Vert A x\Vert'}{\Vert x...
...ert\le 1}{\Vert A x\Vert'}
\quad\mbox{($A\in\R^{m\times n}$)}
\end{displaymath}

とおくと、

\begin{displaymath}
\Vert A\Vert''<\infty\quad\mbox{($A\in\R^{m\times n}$)}
\end{displaymath}

となり、$\Vert\cdot\Vert''$ $\R^{m\times n}$ のノルムとなる。 これを $\Vert\cdot\Vert$, $\Vert\cdot\Vert'$ から誘導される作用素ノルムと呼ぶ。

任意の $A\in\R^{n\times n}$ に対して、 $A$ のスペクトル半径 ($A$ の固有値の絶対値の最大値) を $r(A)$ と書く。


\begin{jlemma}[作用素ノルム≧スペクトル半径]
$\Vert\cdot\Vert$ ...
...\Vert\ge r(A)\quad
\mbox{($A\in\R^{n\times n}$)}.
\end{displaymath}\end{jlemma}

$\R^n$$p$ ノルムを与えたとき、 $\R^{n\times n}$ の作用素ノルム

\begin{displaymath}
\Vert A\Vert:=\sup_{x\in\R^n\setminus\{0\}}\frac{\Vert A x\Vert _p}{\Vert x\Vert _p}
\quad\mbox{($A\in\R^{n\times n}$)}
\end{displaymath}

$\R^{n\times n}$$p$ ノルムと呼ぶことにして、 やはり $\Vert\cdot\Vert _p$ という記号で表わす。


\begin{jproposition}[行列の $p$ ノルム]
任意の $n\in\N$, $A=(a_{ij})\...
...$A$ が正規行列
($A A^T=A^T A$) ならばなりたつ。
\end{jproposition}


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桂田 祐史
2014-05-27