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2.7.2 非対称の場合

$ A$ が対角化可能としておく (これは余計な仮定か?)。 つまり、$ \lambda_i$ に属する固有ベクトル $ z_i$ が存在し、 $ z_1$ , $ \cdots$ , $ z_n$ が基底となると仮定する。

よく知られているように、 $ \overline \lambda_1$ は、 $ A$ の Hermite 共役 $ A^*$ の固有値になるが、 その固有ベクトル $ w_1$ をシフト法で求めておく (もちろん $ A$ が「対称」ならば $ \lambda_1=\lambda_1^*$ で、 $ w_1=z_1$ と取れるので、対称の場合にやった操作の一般化になっている)。

必要ならば定数倍することによって、 $ w_1^*z_i=\delta_{i1}$ となるようにできる。実際、 $ A^*w_1=\overline
\lambda_1 w_1$ に注意して、

$\displaystyle w_1^* z_i=(z_i,w_1)=(z_i,{\overline\lambda_1}^{-1}A^* w_1)
={\lambda_1}^{-1}(Az_i,w_1)={\lambda_1}^{-1}\lambda_i(z_i,w_1)
$

であるから、

$\displaystyle \left(1-\frac{\lambda_i}{\lambda_1}\right)w_1^*z_i=0.
$

ゆえに $ \lambda_i\ne \lambda_1$ ならば

$\displaystyle w_1^* z_i=0.
$

一方 $ w_1^* z_1\ne 0$ である。 実際、$ w_1$ $ w_1=c_1 z_1+\cdots+c_n z_n$ と展開すると (ここで $ \{z_i\}$ が基底であることを使っている)、 直交性 $ w_1^* z_i=0$ ( $ i=2,3,\cdots,n$ ) によって、 $ 0\ne w_1^* w_1=c_1 w_1^* z_1$ となるから。

そこで $ B=A-\lambda_1 z_1 w_1^*$ とおくと、

$\displaystyle B z_1=A z_1-\lambda_1 z_1 w_1^* z_1=\lambda_1 z_1-\lambda_1 z_1=0
$

また

$\displaystyle B z_i=A z_i-\lambda_1 z_1w_1^*z_i=\lambda_i z_i-\lambda_1 z_10=\lambda_i z_i.
$

ゆえに $ B$ について冪乗法を適用すると、$ \lambda_2$ が得られる。



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桂田 祐史
2015-12-22